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天たま見た

  • 2016/09/09(金) 13:56:02

 押井守監督の作品群の中でも散々に言われている(?)
天使のたまご、見た。
一言で言えば「脚本家が大激怒する奴」笑
自分の好みとしてはかなり好きなんだけどね。

 とにかくたくさんのことを教えてくれる雄弁さがある。
あくまでも自分の中では笑



 この作品をどこからどう語ればいいのか、
正直よくわからないんだけど……

 まず個人的な感想としては
「ひたすら官能的かつ緊張感のある画作り」
「演出だけでゴリ押しする怪作」
大体こんな感じ。

 押井守の演出・世界観で
ブリブリ想像が掻き立てられる人間としては
垂涎の作品なのは言うまでもない笑

 訳わからないという意見が多いけど
実は自分も図像学・神話を利用して
脚本を削ろうと考えたことがあるので、
そこまで意味がわからないという感じでもなかった。

 (同時に、その手法の極北と限界点を
見つめることにもなったんだけど)

 ただ、意図があることは理解しつつも
それが何を意味しているかまでは
もちろん汲み取れなかった笑

 まぁあと、そもそも伝える気がないんだろうな、
とも思ったからそこまで気にもしなかった、
というのがある笑

 要するに映画というものに対しての定義、
あるいはそれに求める感覚が
市場と全く噛み合っていなかったってだけで、
それを崩せば楽しく見れる「かもしれない」。



 さっきチラッと書いたけど、
この作品は言葉でないと表現できないところ以外は
破綻するレベルで削っている。
だから意味がわからないし、脚本家は激怒する笑

 言葉でしか表現できないところの具体的な例としては、
少女の処女性を表すために
「あなたは誰?」という問いかけを最後までさせている。
(聖書の中では 知る=性交 というメタファーがある。
知らない、というのはつまり処女である、と。)

 で、じゃあ、どうやって話を展開させているかというと
これはもう演出。画作り。これで動かそうとしている。
だから半端ないレベルで演出・画作りが強烈。
ワンカットワンカットが完璧に作られている。



 ただ、図像学・神話を利用した演出による
「脚本の削減」これは個人的にはナシかなと思う。

 そもそも、脚本の領分と演出の領分は違うな、と
これを見て思ったし、主従で言うなら
脚本が主であり、演出は従ではないだろうか。

 言い換えれば、脚本を膨らませるのが演出であり、
そもそも機能が違うものだと思った。
脚本術に関しては全く勉強していないので
これに関してはあまり言わない。



 また、非常に厄介というか、考えるべきなのは
ファンタジーにおいて図像学・神話の引用は
行うべきではないんじゃないかな、と思った。

 ファンタジーというのは要するに、
「精神的な営みの構築」と、この活動に付随する
「象徴・定義の再構築」
これが絶対に必要不可欠だと感じる。

 具体的なプロセスを言うと
「この世界は○○という出来事で発生して、
○○という出来事が起こって今に至る」
この出来事を作り上げるのが精神的な営みの構築。

 それを作り上げていくと
「この世界においては 水=○○ という認識じゃないと
どうもしっくり来ないよね」
ということになってくる。
それを万般に行うのが象徴・定義の再構築。

 大事なのはここからで、象徴や定義したものとの関わりで
そのキャラクタの役割を演出することができる。



 例えば「人間」というものは
別にそこまで大それた存在でもないし、
それそのものがドラマに対して影響を及ぼす属性には
なかなか成り得ない。

 そこで仮に「機械=神々の文明」という象徴にしたとする。
エンジニアというのは「機械を使役できる」から、
そのドラマの中では
「神々の文明に浴するもの・それを伝える者」
そういう役割を背負わせることができる。

 もちろんもっと踏み込む必要がある。
神々というのはその世界において何をしたのか、
どういった精神の働きの象徴なのか、
そういうことを定義しないと
「神々の文明を伝える者」は、具体的に
どういう意味合いを持つのかはクッキリとはしない。

 こういうことをひたすら繰り返すことによって、
それぞれのキャラクタの役割・側面を
キリッと立たせて見せることができるし、
当然テーマもキリッと見せることができる。
それがファンタジーの良いところだと思う。

 裏を返すと、人間だとか、大地だとか、
それらに対して抱いているイメージの漠然とした
(ドラマを見せる上で非常に邪魔な)無意識を
打ち崩すことができるのが
ファンタジーと言えるのかもしれない。

 図像学・神話の引用というのは、
そこら辺の旨味を削る手法だと言いたかった。




 とまぁ、こんな感じで、天たまの良いところ・悪いところを
自分の中で噛み砕いていくと
めちゃくちゃ多くのことを勉強できる訳だ。
そういう意味で非常に雄弁な作品であると。

 ネタバレコミコミで書いて良ければ
もっとがっつり踏み込んだことを書きたいけど
まぁいつか機会があれば……。